ロボットの設計思想はどうなる?2017国際ロボット展に行ってきた

12月1日、2017国際ロボット展に行ってきた。
テレビで紹介していた通り、大盛況といった感じである。
事前登録を済ませておけば並ばずすぐに入れることも好感が持てた。
ところが、会場に入ってすぐに疑問に感じたことがある。
いろいろなロボットが並んでいるし、デモンストレーションでいろいろな動きをしているが、どれをとっても同じ動きでしかない。
1980年代に西友が能見台にメカトロ店舗をつくり、ロボットにジグソーパズルをさせるなどデモンストレーションをやっていたのとまったく同じに見えてしまう。
この30年以上の間、基本的な進歩がなかったことになる。
もちろん、センサーもアタッチメントもソフトもよくなっているから、精度は飛躍的に高まり、スピードも速くなっているが、基本的には人間の動きを機械に置き換えてやらせているだけでしかない。
疑問を晴らすために大手企業や日本でもトップクラスと思われる大学の出展ブースで訊いてみたが、どうもこちらが期待するような答えが返ってこない。
唯一、こちらの意図を理解し答えてくれた=会話が成り立ったのはファナックの担当者だけであったから、残念というしかない。
おそらく、多くの人が「この人間は一体何を言っているのか...???」といった感じなのかもしれない。
筆者の疑問は、AI、ロボットなどまさに21世紀を支えるデジタル技術が救世主のように言われているが、「それって人間の動きを機械に置き換えているだけ?」というものである。
製造ロボットはアームを器用に動かし人間と同じように部品を取り、組み立てていく様は確かに素晴らしいことであるが、それではいつまで経っても、どんなに早くして見ても人の動きと同じ軌道をなぞっているだけであるから限界がある。
30年以上も前のことだが、あるパンの工場で流れてくるパンに光沢をつけるために玉子の黄身をつける工程を見たことがある。バケットに玉子の黄身がたくさん入っていてその下をパンがコンベアに乗って流れていく。なんとたくさんの刷毛がバケットに入って玉子をつけ、その刷毛でパンに黄身を塗り付けている。3回(パン3つ)に対して1回玉子をつけるから後ろに行くほど玉子は薄くなる。
まさに手作業をそのまま自動化している。おそらくバケットから下に幅の広い布状のモノを伝わせるか、噴霧すればまた違うのだろうが、詰まる、固まる等の不具合があるため、仕方なくやっていたのだと思う。
まさに人の作業をそのまま機械に置き換えるというのは今も昔も基本的には何も変わっていない。
筆者が学生だった時代、オールドIE(Industrial Engineering)の時代には複雑な形状の部品があれば、それを2つ、3つに分けて単純な形に変え、加工しやすくするなどということが言われていたことがある。
その後、NC旋盤、マシニングセンターが当り前になると誰もそんなことを言わなくなり、3Dプリンターの時代になれば、そんなことがあったことさえ信じられないと言ってもよい状況にある。
そこで、製造ロボットである。
確かに人と同期して動くロボットなど、人が働く現場に調和することが重要な意味を持つことも十分理解できるが、それでは、いつまで経っても人の動きの置き換えという状況から抜け出せない。
何故、これだけ技術が進歩しているのに、「大元の思想が全く変わらないのか」不思議でしょうがない。
センサーもアタッチメントも精緻な動きも可能であるならば、「製品の構造、部品、加工方法、製造工程」をロボットの能力が十分発揮できるように修正しないのだろうか。もちろん、ロボットそのものの構造も変わることになるだろうが、いまのまま人の動きの置き換えでは、工程も加工方法も製品ユニット=構造も従来とは基本的に大きく変わることがない。
加工スピードにしても人の動きをそのまま模倣している限り、どんなに早送りのように動かしてみても工程そのものが変わらなければ限界がある。
多くの場合、製品の心臓部分はチップに集約されているため、加工の中心は周辺のメカ部分になる。基本的に機能が決まれば構造も決まるから機能別に構造をパターン化することはできる。部品形状、加工方法、工程も同様である。
そうであれば、そろそろ技術とは別の次元のロボットを使いこなす生産システムの思想そのものをリデザインする必要があるのではないだろうか。
ファナックの担当者氏はロボットをつくる上で自社にはそのような工夫が多少はあるが、クライアントのニーズには、ないのではないかというような話をしていた。
どんなに技術開発が進んでもロボットの世界はまだまだなのだろう。

*そこで出展していた大学のブースへいって訊いてみたが、学生・院生ばかりということもあり、全く話にはならなかった。日本を代表するような大学であることを考えると、学生・院生の内にトレーニングすべきことが、どこか違うように思う。

1月18日には第1回ロボテックスにも行き、基調講演も聞いた。
個々の技術よりもインテグレーターの重要性が分かったのが大きな収穫だったが、そこがブラックボックスになっているのでなかなかその全体像が見えてこない。

個々の技術は非常に優れているのだから、その使い方・生かし方、設計思想を研究する分野が車の両輪のように発展してこないと本当の意味でのポテンシャルを発揮することができない。
仮に思想そのものが変われば、現在の技術も思想と共に価値が失せる可能性がある。
何とももったいない話である。
開発そのもののやり方を見直さないと、下働きばかりでプラットホームを構築することはできない。
何かスッキリしない状況である。
第4次産業革命はどうなるのだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください