◆国勢調査から見える人口減少・高齢化の状況
平成27年国勢調査人口速報集計結果によると、我が国の人口は1億2711万人,前回調査から5年間で94万7千人減少したことになる。大正9年の調査開始以来,初めての減少であり、全国1,719市町村のうち,1,416市町村(82.4%)で人口が減少し、5%以上減少した市町村は828(48.2%),同10%以上減少(再掲)も227(13.2%)ある。(いずれも平成22年比)
ここまでは、一般に認識されている数値ということになる。もう少し、細かく見ていくと、次のようなことが分かってくる。
①平成 27 年の総人口1億 2711 万人のうち,日本人人口は1億 2397 万2千人,平成22年比 138 万6千人減である。94万7千人との差、約44万人は外国人の増加である。日本人が減っても、ビジネスや留学で日本に住む外国人が増えれば、人口の減少は緩和される。常に進化し、活力ある国であれば、海外から日本にやってくる人も増えるが、それがない魅力のない国だと海外から無視され、やってくる人もいなくなる。
幸いなことに、いまは魅力があるということなのだろう。外国人が増えることで毎年の人口減少が約19万人程度に見えているが、日本人だけを見ると、それよりも約10万人多い28万人ずつが毎年減少していることになる。
②異常な東京圏の構造
地方と違い、巨大な東京を支えるのは埼玉県、千葉県、神奈川県の3県である。他の地方と違い、東京都とこの3県の関係は異常とも言える関係にある。
例えば、昼夜人口比率は東京都118.1に対し、埼玉県88.5、千葉県89.5、神奈川県91.1である。(47都道府県の中で80台は奈良県89.8の3県のみ、ほとんどが99台にある)
東京都への流入人口295.1万人の内訳は、神奈川県36.6%、埼玉県32.5%、千葉県24.2%と3県で約95%を占める。
そのため、この3県の一人当たり年間商品販売額(県年間商品販売額÷県人口)は、47都道府県の中でも40位以下、有効求人倍率も全国1.37に対し、千葉県33位1.19、神奈川県43位1.07、埼玉県46位1.03(平成28年7月)であり、つい最近までは1.0に乗るかどうかという状況にあった。
③高齢者単独世帯の増加
65歳以上人口のうち、単独世帯は16.8%、男性179.7万人12.5%、女性383万人20.1%。
高齢者の増加は高齢者夫婦のみ世帯、高齢者単独世帯の増加を意味し、その中でも特に世帯主75歳以上世帯の増加が目立つ。
④高齢者の割合が増える県
平成22年から27年までの5年間に65歳以上人口比率が4%以上増えたのは、北海道4.5%、平均年齢48.3歳(+1.8歳)、青森県4.1%、48.8歳(+1.8歳)、秋田県4.0%、50.9歳(+1.6歳)、福島県4.1%、48.2歳(+2.1歳)、茨城県4.0%、46.4歳(+1.5歳)、埼玉県4.2%、45.2歳(+1.6歳)、千葉県4.5%、46.0歳(+1.7歳)、富山県4.2%、48.2歳(+1.3歳)、石川県4.1%、46.6歳(+1.3歳)、京都府4.5%、46.4歳(+1.6歳)、大阪府4.1%、45.9歳(+1.6歳)、奈良県4.5%、47.0歳(+1.6歳)、広島県4.0%、46.7歳(+1.4歳)、山口県4.0%、48.9歳(+1.2歳)、徳島県4.2%、49.1歳(+1.5歳)、香川県4.2%、48.0歳(+1.3歳)、高知県4.1%、49.8歳(+1.4歳)の17道府県であり、人口が集まりそのまま定住する都市部と人口が減少する地方が混在している。
若い人の人口流入が極端に多い東京都、出生が多い沖縄県などは2%台にとどまっており、3%台にある県は人口移動の少ない地域と考えられる。(転入、転出とも少なく自然な形で高齢化している)
◆推計値と国勢調査の差異
「日本の地域別将来推計人口 —平成22(2010)~52(2040)年— 平成25年(2013年)3月推計」における推計値と平成27年国勢調査 人口速報集計結果の差異をみると、一つの傾向が見える。
図表 平成25年人口推計値と平成27年国勢調査の差異は、横軸に2015年の人口増減(2010年比)、縦軸に推計値と実績値の差異をプロットしたものである。
右側は人口増加で右上ば、推計値よりも大きく増加、右下は推計値よりも増加幅が小さいことを表している。同様に左側は人口減少、左上は推計値よりも減少幅が少なく、左下は推計値よりも減少幅が大きい。(*東京都は右上のはるか上にあるため、座標の関係からカットして表示)
全体的に減少の仕方は推計値ほどではないが、全般的に減少していることには変わりはない。
問題は、神奈川県のように増加が推計値よりも大幅に減
った県が現れていることである。
大阪府や宮城県、広島県などが左の上の方にあるが「人口減少の幅が小さくなった」ということであり、減少していることには変わりはない。むしろ、ごく少数の人口が集中する件と圧倒的多くの人口減少にある道府県の二極化が明確になったということが、今後の対応を難しくしていくだろう。
すでに自然増は見込める状況にないため、人口が増えるのは他県からの転入による社会増しか見込めない。
ごくわずかな都・県に人が集まり、圧倒的多くの道府県からは人が転出、あるいは自然減で減少する。人口が増えるには、冒頭で見たように外国人が住みつくしかない。
明確な方向性を出さない限り、このままじり貧になっていくことは目に見えて明らかである。
◆地方創生で町おこしをやっても人口は増えない
多くの地方で地方創生の名のものに、地方の活性化、町おこしを始めているが、町おこしをやることと人口を増やすことは必ずしも一緒ではないということを改めて認識する必要がある。
高齢者が余生を送るために地方に移住しても、その時だけは人口が増えても、長続きしない。若い人達が結婚し、家庭を持って子育てをするという、かつては当たり前であったサイクルが定着しない限り、人口が増えることはない。
「何のために町おこしをやるのか」という目的を明確にしないと、一時的に産業が盛んになっても継続することができない。どんなにITを活用し、ロボットやAIを活用しても人口は増えない。
地方で盛んにつくられる直売所、道の駅も、いまはいいかもしれないが、商品を供給する農家が発展し、継続することができなければ、いまの代で終わってしまう。まして地方の農家の高齢化は顕著である。
目的、前提を明確にした上で取組む必要がある。
◆提案
①滞在型セカンドライフ
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