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ワクワクする店 食品ブティックを創ろう!

■ ワクワクする店「食品ブティック」を創ろう!
筆者が初めて「食品ブティック」を提案してから30年近く経つ。拙著「業務革新とクラシフィケーション」(株式会社商業界平成9年7月)追補「21世紀への提案」の中でも触れているが、バブルが崩壊した90年頃、ノンフーズの実験的な店舗を創り上げ、その後、食品スーパーでも新しいフォーマットをつくろうとアイデアを温めていた。
結果的にはバブルが崩壊したこともあり、アイデアは実現できずにお蔵入りになったが、現在のような状況を考えると、改めて提案するにはちょうど良い環境、タイミングと思っている。
消費を経済活動ととらえれば、売場は激しい競争の場であるが、「消費は文化」ととらえれば、そこは新たな文化を産み出す創造の場に変わる。
バブル崩壊後、売場はローコストと価格競争ですっかり荒廃してしまった。その結果、皆が疲弊し、日本中からワクワクする面白い売場が消えていった。どんなに表面を取り繕っても、本質は無機質な倉庫のような売場、お決まりの商品・値付け・価格訴求の販促、補充作業のような買物、…では、「店」「売場」「買物」の本来的意味は失せている。
ただ物理的に「物」を入手するだけなら、わざわざ手間暇かけて店まで行く必要はない。お客がネット通販・テレビ通販にシフトする一つの大きな理由と言ってよいだろう。
物が溢れる時代の買物は、物が充足していく時代のそれとは明らかに違う。そろそろローコストと価格競争で荒廃した無機質な売場ではなく、買物の楽しさ、面白さ、ワクワク感が得られる売場ができてもよい頃だろう。

◆「食」を改めて見直すことができる空間を創ろう!
日本では、壁面に生鮮食品、中島にグロサリーという古典的な食品スーパーの売場が昔から頑なに守られている。しかし、20~30年ほど前、本家本元のアメリカでは「食品スーパーは業種(業種の中に業態がある)」と言われ、食品スーパーはさらに様々なタイプの業態に別れていた。
入口付近の青果は本格的なシェフが作るテイクアウトデリやイートインに変わり、敷き詰めた氷の上に並べられた魚や彩鮮やかな青果売場はマグネットとして店の一番奥に配置された。
赤い絨毯にシャンデリアという高級スーパー、マーケットのようなつくりの自然食品スーパー、重量ラックに高く商品を積み上げ、パレットに山積みにした商品で安さを演出したウエアハウス型食品スーパー、そしてブティッキングという手法で商品をインショップ(ブティック)にまとめた食品スーパー、...等々、店の主張を表現する手法は様々であり、個性的な店舗が数多く出現した。
日本でも高級スーパーを標榜する店が現われたが、実態は内装や什器の色、スタッフの制服、商品の価格帯など表面的な装いを変えただけで、本質は何一つ変わっていなかった。結局、高い商品を売っているだけでは長続きせず、売上が落ちれば売場も商品もただの食品スーパーに戻っていった。
もし、高い商品を集めたのが高級スーパーというのであれば、筆者が提案する「食品ブティック」は高級スーパーではない。かつての東急ハンズやジョイフル本田のような店を現代風にアレンジし、発展させた「食品ブティック」という全く異なる専門業態である。
単に「物」を売るのではなく、ホームセンターのBIY(Buy it Yourself ; 材料は自分で買うが加工は専門業者に有料で委託する)のように、様々な機能的サービスを提供する。
お客が見たこともない食材は調理方法、食べ方を提示し、メニューのアイデアを提案するだけではなく、産地・生産者と情報交換できるネットワークの設定、お客が買った生鮮食品の下ごしらえ、要望に応じた調理、店内のイートインで食べられる料理提供(消費増税次第でイートインもどうなるか分からないが…)なども行う。
シェアキッチンや地方の郷土料理(おふくろの味)を教え・提供するスタジオ(インターネットライブ配信)などを備え、「食に関するソリューション、エンターテイメント、エデュケーション」といったサービスを幅広く提供する。
テレビで話題の「伝説の家政婦志麻さん」のように、誰からも支持される革新的な食の新業態である。
子供の誕生パーティー、還暦・喜寿・米寿のお祝いなどに対しては、単に料理を提供するだけでなく、楽しく時間が過ごせるように企画提案・コーディネイトも行う。会場の他、様々なサービスの手配も行い多様なニーズに対応する。
会員に対しては、カルテに基づき管理栄養士が食事指導をし、調理サービス時にはカロリー、塩分、糖質、脂質などをコントロールする。さらに管理栄養士、理学療法士、作業療法士などによるアドバイス・レシピ提案、カルテ(データベース)・IoTデバイスで収集したデータに基づく生活管理まで行えば、医食同源を実践する地域の健康デポとしての機能も果たす。
「食品ブティック」に必要な商品はこだわって品揃えするが、取り扱う意味のない商品は扱わない。立地、売場面積、お客のニーズに合わせて物販を絞り込み、専門的な商品構成、サービスと売場創りに特化する。
価格競争から解き放たれた自由な空間は、お客の興味を掻き立て、好奇心、探求心、知識欲を満たすことで知らず知らずのうちにQOL(Quality of Life)を高める働きをする。売場を創るスタッフも、そこで過ごすお客も、心から楽しむことができる密度の高い空間である。
当たり前の日常(ケ)に意味を持たせ、ハレ(祭り)に変える空間を提供することが「食品ブティック」の重要テーマである。売場の意味も、消費する意味も、そこで過ごす時間の意味も、従来の小売店・飲食店とは全く違うから、競合する店は存在しない。最強の業態である。
そこに行けば、見たこともないような商品やサービスがあるから、遠くからでもお客は来店する。日本では単店で100億円を売り上げる「食」の店は見当たらないが、食品ブティックならそれが可能になる。アパレル比率が低下するショッピングセンターの次世代の核としても期待できる業態と言えるだろう。
現在は、「既存業態ではマーケット環境の変化・進化に対応できない」という点でバブル当時とどことなく似た状況にある。しかも、店が進化する方向性は大きく変わっていないのに、デジタル技術の進展によって使える道具は飛躍的に増えている。
まさに、「食品ブティック」を誕生させるには絶好のタイミングである。

◆食品ブティックの売場イメージ
主通路の外周壁面にはIKEAのようなシーン別コーナー、あるいは品種中心に構成したショップ(ブティック)を配置する。主通路の内側、売場中央には、生鮮食品を中心にマーケットのような売場をつくる。場所がまとまることで人との距離感が縮まり、賑わいを演出しやすくなる。
外周は物販、飲食、教室、キッチン、カウンターなど物販、サービスをミックスした様々な要素のショップで構成する。消費者と生産者・メーカーをつなぐ、来店する消費者同士をつなぐ、リアルプラットホームとしての機能を併せ持つ空間は、見るだけでも十分楽しめる複合機能の空間である。
かつてカーマ21岐南店が個人事業主など地元事業者を取り込み、様々な教室・サービス業を施設内で営業させる代わりにカーマにはない専門商品(取引先チャネル)を紹介してもらい販売するというコラボレーションに取り組んだことがある。食品ブティックにも取り入れたいアイデア、手法である。
現在であれば、AI(人工知能)、AR(Augumented Reality拡張現実)、VR(virtual reality仮想現実)、MR(Mixed Reality複合現実)など、様々なデジタル技術も活用できるから、限られた空間であってもテーマパークやアミューズメントパークのような要素を加えて機能拡張することが可能である。
すでに、野菜・果物の生育状況・収穫作業、あるいは魚の養殖場・漁の場面などをWebカメラで見るだけの時代から、(デジタル技術によって)その場面に自分が入り込み、疑似体験ができる時代に変わっている。
近い将来、リアル店舗もデジタル装備が充実し、様々に機能拡張するようになれば、店は単なる「物売りの場」から、消費に関するあらゆるシーンを「疑似体験する場」に変わる。

◆食品ブティックのアイデア  「食」をテーマに様々なシーンを再発見する、疑似体験する空間
消費者に直接商品を提供する「食」ビジネスは、「食材」「加工食品」「調理食品」を売る小売業と「料理」を提供する飲食業が中心である。小売業のメインである食品スーパーは、生鮮食品や調理食品に注力し、一通りのものが揃うワンストップショッピングにこだわるから、どこも同じ特徴のないフルライン構成になる。その結果、NB商品を扱わない成城石井が特別視されるように、一般から外れて専門特化した方が店の存在感が強調されることになる。ただし、取扱商品が違っても小売店であることに変わりはない。
一方、飲食店はその経営形態からも種々雑多な形態があり、個性的ではあるが、やはりどこも一様に料理を提供しているにすぎないから限界がある。最近では、料理アプリを提供する企業が、使う食材をネットで販売するというビジネスモデルも現れているが、別段物珍しさは感じられない。
そうであれば、商品を絞り、「未開のマーケット」である知識・技術・ノウハウ中心のビジネス、機能支援・機能代行ビジネス、情報・ビジネスのマッチング・プラットホーム、情報交換・参加・体験・交流・交換の「場」を提供するビジネスなど取り入れた店=人が集える物販とサービスの複合機能を持つ食品ブティックの方が人が動く分、商品も動かしやすいだろう。
食品ブティックを形づくるアイデア、ヒントは様々である。
例えば、バブル当時、生きた魚を扱い、丸のまま、三枚おろし、下ごしらえ、半調理、刺身、煮魚、焼き魚、…等々、客の求めに応じて加工・調理し、持ち帰りも、店内での飲食もできるという店があった。
食品スーパーと飲食店とでは仕入れルートが違うから当然取り扱う商品も違う。魚に限らず、肉や野菜も同様である。季節に関係なく、どんな状況下でも定番商品をかき集めて販売する食品スーパーと、その日仕入れられる良い商品だけを取り扱い、可能な限り良い状態で提供する店とでは根本的な違いがある。
また、日本は世界的に見ても多様な食文化=郷土料理を持つ数少ない国だという。東京をはじめとした都市部には数多くの地方出身者が集まっており、郷土料理、おふくろの味は「食」の重要なテーマでもある。外国人観光客にとっても日本の文化に触れることができる有用な空間になる。仮に全国47都道府県にある郷土料理を週替わりで扱ったら52週ではとても足りない。同様に考えると、増え続ける外国人観光客・ビジネス客・国内居住者の郷土料理も一つのテーマになる。
スペース、商品・サービス、スタッフ、…等々、全てを固定的に考えなければ、いつ行っても飽きが来ない魅力的な空間、「食」を通じて人が集う交歓・交流の「場」が出来上がる。

現在、重要なのはアイデア、企画力、情報力、技術力、マーケティング力を前提としたプロデュース力である。
人口が減少し、マーケットがシュリンクしていくことを考えると、店・売場を「食」に関するテーマパーク、アミューズメントパークのような空間に進化させるのか、それとも頑なに従来通りの物販にこだわり続けるのか、判断が分かれるところだろう。
筆者は、人口動態などマーケットの環境与件を考えると、かなりの確率で前者だと考えているが、どうだろうか。

二次機能型SM(ストア)をつくろう!

機能(働き、役割)という考え方がある。
基本機能はモノがモノとして成り立つ必要最低限の条件、食に関して言えば、安全に食べられて空腹を満たし、生体を維持するうえで必要となるエネルギー・栄養素が摂取できるということになる。
それに対し、二次機能は、①食品が持つ特定成分の働きにより健康や美容に役立つような働き、②友達とくつろぐ際のお茶やスイーツ、パーティ・懇親会での料理やお酒が果たす交流・交歓・親睦を促進する触媒としての働き、③インスタ映えという言葉に象徴されるようなSNS投稿の演出道具としての働き、④知識や技術を高めるといった自分を成長させるための題材、…など、食本来の機能=基本機能とは異なる様々な役割、働きである。
三次機能は三ツ星レストラン、有名シェフ・パティシエの店というように「提供される商品・料理」とは分離し、食とは直接的に関係のない独自の意味を持ちだしたものである。
消費者は基本機能が満たされると次には欲求が二次機能、三次機能へと向かう傾向にあることが経験的に分かっている。メーカーも差別化のために二次機能、三次機能を意識したマーケティング戦略、商品開発を強化するため、マーケットは自ずとそのような方向へと向かう。
マズローの欲求階層とも似ているが、機能間における順位はさほど明確ではなく、その時々のはやりなど状況によって様々に変化する。
すでに、食が「単に空腹を満たすだけの時代」は終わり、たとえデカ盛り、メガ盛りであっても、大辛メニューなどと同様、珍しさ(希少性)やゲーム性(早食い競争、我慢比べ、罰ゲーム、チャレンジなど)によって、「場」の雰囲気を盛り上げるための演出道具として用いられるケースが増えている。
最近の傾向として、身近にある「食」の意味、役割は他の商品分野と比べ物にならないくらい大きく広がっている。
人口減少・高齢化が進む現状では、すでに従来のように食品をただ「物」として売っているだけで店舗を維持することは難しい。
まして、同質化するチェーン店が縮小するマーケットの中でお客を取り合うのでは勝ち組なしの疲弊戦に突入することは明らかである。
根本的に変化する必要がある。

食品を対象に、基本機能、二次機能、三次機能について整理すると次のようになる。
例えば、ニンジンを例にとると、基本機能は煮物やカレーに用いる食材であり、安全に食べられて空腹が満たせ、一定のエネルギー・栄養成分が摂取できる。
また、ニンジンの三次機能はあまり思い浮かばないが、地域ブランドの雪下ニンジンなどがそれに近い。分かりやすいのは青森県田子町のニンニクなど、明らかに地域ブランドとして確立されたものであり、田子町というだけで独自の意味を持ち出している。
*いずれの場合も機能という考え方、意味を理解するうえでは比較的わかりやすいが、三次機能の場合、ブランドとしての認知度が高まり、そのポジションが確立できるまで(モノと分離してブランドが独自の意味を持ち出すまで)は、二次機能的要素が重要になる。

それに対し、二次機能では、①有機JAS(日本農林規格等に関する法律)に認定されており、「環境にやさしい」「安全・安心」といえるニンジン、②インスタ映えする赤、紫、黄色など様々な色の人参を用いたパーニャカウダ(いろいろな種類・色の生、あるいは温野菜をパーニャカウダソースで食べる見た目にもきれいな料理)といった「雰囲気を演出するための道具」としてのニンジン、あるいは③ニンジンの色によってβカロテン、リコピン、アントシアニンなどを多く含むことから「健康にやさしい食材」としてのニンジン、...などというようにフォーカスの仕方によってその意味、働きは様々に変わる。
二次機能は、モノをベースにして基本機能とは異なる副次的機能で、なおかつ三次機能のようにモノと分離して独自の意味を持つようになったものではないものすべてが対象となる。その範囲は広く、様々である。
また、前述のように、場合によっては三次機能との境目が曖昧な場合もあり、明確に線引きすることが難しいケースもある。
二次機能について、大きくいくつかのパターンに分けてとらえると次のようになる。
一つ目は、食としての本来的機能を超え、特定成分の持つ特性をコントロール(強化、減少、バランス化)することで健康、美容、ダイエットなどへの効用を期待する分野である。
例えば、リコピンを通常より多く含む加熱用トマト、トマトジュースなどである。リコピンの持つ抗酸化作用はβカロテンの約2倍以上、ビタミンEの100倍以上といわれている。脂溶性があり、加熱すると吸収率が高まるため、油と一緒に加熱調理して摂るとよいとされる。
同様に、低カロリーで食物繊維、特に水溶性食物繊維を多く含む食材であれば、腸内環境にもやさしく、ダイエットをはじめとした様々な効果が期待できる。寒天、キノコ類などがよく知られているが、茶葉や焼き海苔なども食物繊維、ビタミンCなどを多く含む。
地域の食性と寿命・特定の病気の罹患率の関係などから、健康に良いと考えられる食品と食べ方などが提言されることがある。医食同源といわれるように、日々の食事によって健康をコントロールするという役割である。
2つ目は、ティータイムのスイーツや酒席の酒・つまみ・肴、パーティ・宴会の酒・料理といった催し物、あるいは交流・交歓に際しての演出道具的役割、あるいはインスタ映えという言葉に象徴されるように、一つのシーンを演出する道具といった役割である。
インスタ映えでは、色やデザイン、意外性、話題性など、Web上で特定シーン、ストーリーを演出する道具としての役割であり、いわゆる「盛る(様々に加工して強調するなどし、演出する)」ことによって、現実とは異なる世界をつくり出す役割を果たす。
一方、ティータイムのスイーツや酒席・パーティ・宴会の酒・肴・料理などは、リアルの世界で、しかも一定時間、複数の人間が、同じ空間で時間を共有するため、同じ演出道具であっても、果たす役割ははるかに多く、複雑である。参加する人数やメンバーの距離感にもよるが、場合によっては、そこで提供される酒や肴、料理の産地、作り方、味、食べ方など様々なうんちくが会話の導入として重要な役割を果たすことも必要になる。美味しさや食べることでの満足感ばかりでなく、「場」を和ませ、また交流・交換を促進させるなど、多様で幅の広い役割が求められる。
 3つ目は、共通の体験を通して交流・交歓・親睦を図るといった場合の題材としての役割である。キャンプでの料理、バーベキュー、タコパーティなどが典型的な例であり、一緒に準備し、調理するなど共同作業を行うことで、ふだん見ることのできないお互いの異なった側面を知ることができ、親近感が増すなどの効果が得られる。
 4つ目は、知識・技術を高め、成長するための題材としての役割である。「食」「料理」は身近にあって馴染みやすく、自分の成長、自己実現のための題材としても取り組みやすい。
 キャラ弁をはじめ、魚の三枚おろしや珍しい外国料理など、あまり馴染みがない、あるいは技術的に難しいと思えるものであれば、できた時の達成感、充実感も大きく、周囲からの評価も高い。
 
★イートイン、グロサラントなど飲食業と小売業の境目がなくなりつつある状況を考えると、まだまだ多くの機能が分化して専門特化し、それらをミックスした業態が生まれても不思議はない。
 これまで、食品ブティック、テーマパーク型ストア(SM)、アミューズメントパーク型ストア(SM)を提案してきたが、一つの可能性として二次機能をベースに専門特化した食品スーパー、Sp.SM(Specialty Supermarket)を提案したい。
 物を物としてしか売っていない現状は、商品の本来的価値を引き出しているとはいえず、生産者、流通業者、消費者のすべてが損をしているとしか思えない。
マーケット環境を考えてもWIN- WIN- WINの関係ができる業態を創り上げることが必要だろう。

データ分析に使えないデータ設定、システム???

データ分析をしようとしても、使えない情報システムを、膨大な金額を投資して使っている企業は多い。
昔、ベテランのシステムエンジニアに、どの業態も商品を仕入れて、在庫し、販売するだけであるし、もとになる情報も商品の売価、原価、数量だけだから、まったく同じ標準的なシステムさえあれば、すべての業態、すべての企業が同じシステムを使うことができるのでは?と疑問を投げかけたことがある。
その時の彼の答えは、そんなことをしたら各企業からのカスタマイズがなくなるから、この業界の規模、膨大な数のシステムエンジニアなどの人材を維持することができなくなる、というものだった。
「業界を支えるためのカスタマイズ」という彼の説明がどこまで本当かは分からないがシステムに合わせて業務を標準化すると考えるよりは、自社の業務の仕組み・やり方に合わせて情報システムをカスタマイズしたがる企業は多い(というより、そういう企業ばかりである)。
小売業にとって必要なデータ、情報処理はある程度限られる。
情報システムもアレコレいじらずに基本をベースに設定すれば、必要なことは確実にできるし、その方が開発もメンテナンスも早く、安く、楽にできる。しかも使いやすい。しかし、なぜかどの企業もカスタマイズしたがるから不思議である。複雑なものほど高度で優れているという錯覚でもあるのだろう。ある意味、鞭の極みともいえる。
しかも、多くの時間と費用をかけて作ってしまった重たく、使いにくい、あるいは使えない情報システムは、簡単に捨てるわけにはいかないから、何年も付き合うことになる。悲惨である。
情報システムを更新するには、投資金額に見合った期間使う必要がある。その間、必要なデータ、欲しいデータが取れないから、企業のマネジメントやオペレーションのレベルは信じられないほどの低レベルから抜け出すことができない。
業務システムとは何か、情報システムとは何か、データ分析とは何か、という最も基本的なことが理解できていないまま意思決定をしたツケは少なくとも10年単位で影響する。

■数値の基本
数値は項目、単位、期間という3項目からなる。
項目は、売上、在庫、仕入の数量、金額が基本である。それに売価、原価、売価変更(値上・値下)・値入・粗利などの金額と率。客数(精算件数)・客単価・買上単価・買上点数、商品回転率や交叉比率、粗利率相乗積など、数値はいろいろあるがそれらは、売上、在庫、仕入、客数(精算件数)、買上点数など基本的な数値から算出することができるから、基となる数値は限られている。
知りたい情報も時系列変化、部門・ライン・クラスなど単位の系列で分解、統合して内訳や構成を見ることが中心だから、そんなに複雑で難しい処理も必要はない。
むしろ重要なのは商品構成であるが、残念なことにPOSのコード設計が元々事務処理であるため、単品の識別にしか使えない。
商品名、商品コード、JANコード、どれをとっても類似する商品を識別することは難しいから、商品が持つ特性のうち、どの特性が支持されて商品がよく売れているのか分からない。
例えば、チョコレートをタイプ別や成分別に売上(金額・数量・構成比)/在庫/仕入/値入/粗利/商品回転率などを見ようと思っても商品マスターを一つ一つチェックして集計しないと分からないから、そんなことに手間をかけて分析をすることはほとんど不可能といってもよい。
ビッグデータの時代でも、単品の識別は可能でも集計するためのフラッグがなければ肝心な集計ができない。ABC分析はできても様々な切り口での集計ができないデータでは、1つ1つ見るか、数百アイテムをまとめて合計として見ることしかできない。
例えば、週別に時系列でサイズ比率、色比率が変化することは分かるかもしれないが、色×サイズ別比率がどう変わるかはわからない、素材×デザイン、素材×デザイン×色×サイズなど、商品によって知りたい内容は異なるが、商品構成における最も重要な要素間の比率が分からない。

情報時代、データが重要と言いながら技術ばかり進歩しても肝心のデータ分析とは何か、データ分析のためにデータをどのように持てばよいかという最も基本的なことの理解がなければ、技術もシステムも生かせない。
そのことすら気づいていないとなると手のつけようがない。
本当の意味でデジタル化時代と言えるようになるには、実態を本質的に見直して変えていかなければならない。
データ分析からプログラミングまで一人でこなせるデータサイエンティストが必要とされるのも分かるような気がする。専門的なスーパーマンを養成するしかないが、まずは体制を整えることから始めるしかないのだろう。
対応が急がれる。

データ分析は地図を見るのと同じ。

データ分析は複雑で難しいというイメージが強く、数字アレルギーというように数字を見ただけで拒絶反応を示す人は多い。
一方、なんでも細かければ細かい方が良い、高度だと錯覚を起こしている人もいるから、データ分析に時間ばかりをとられてしまうことも多い。
重要なことは、デー分析の目的である。
「分析は目的にならない」「分析からは何も生まれない」というのは古くから言われてきたことであるが、流通関係の有名なコンサルタントから「POSデータは細かく見ているのだが、なかなか成果が上がらない」と相談を受けたことがある。
人はたくさんのデータを長い時間かけていじくりまわすと多くの場合、達成感、満足感を得ることができるが、それで成果が得られることはない。
分析の目的は、問題点・問題構造を見出し、修正の精度を高めることであるから、いくらたくさんの細かなデータに時間をかけて目を通しても、あるいはたくさんの表やグラフに表すなどしても、実態が変わらない限り、成果が得られることはない。
目的までのプロセスを考えれば、データ収集、分析はほんの前準備の一部に過ぎず、そこから得られた問題点・問題構造など認識できた問題に対して仮説を立て、適切な修正行動をとることが必要になる。
さらに修正行動は仮説にすぎないから、修正後の実績データを確認し、必要に応じて修正するというところまでが本来の分析のサイクルと考えるべきだろう。

そこでデータと分析の問題である。
データ分析は地図づくりと地図を使う行為とよく似ている。
地図は精度を要求するから、データは正確である必要はあるが、地図を見るときは大枠でしか見ることはない。それと同じでデータ分析も、もとになるデータは正確である必要はあるが、それと同じレベルで細かくデータなどを見ていたら、データ全体から見えるはずの問題点も見えなくなってしまう。
データ分析には一定のパターンがあるから、目的に応じて見方も変える必要がある。
全く状況がわからない時には、目的に関係する部分を絞り込みたいから、ウエイトの高い重点分野を確認する、あるいはとりあえず仮説によってデータを整理し関係ない部分を外していく。
関係のある部分がわかれば、データの変化に影響する要因や変化の仕方のクセを見出す。
地図でいえば、例えば主要道路、幹線など行くのに関係する大枠を絞り込み、その道路の状況や万が一の時の代替案などをあらかじめ用意することになる。

目的によって地図も見方は変わるが、目的地へ行く道を見るだけであれば細かく見ることはしない。同様にデータ分析も仮説を立て修正案の精度を高めるのが目的であれば、問題のポイントと修正点を絞り込むのに必要なところだけがわかればよい。
データそのものの精度は必要だが、データが細かい、多い、分析時間が長いことが必ずしも成果に結びつくわけではない。
重要なことは、いかに簡潔に問題点を絞り込み、迅速、かつ精度の高い修正が行えるかである。
地図を使いこなすのには実際の道路事情が分かっていることが大切であるように、商品・売場のデータ分析も商品・売場の実態を知っていると見え方が変わってくる。
データ分析も机上だけでは見えないことが多い。
もともとのデータが現場にあることを考えれば、帰納法的な視点が重要である。

データを使えば科学的か?

データを使えば科学的という錯覚がある。デジタルかが進み、様々なモノ・コトがデータ化されるビッグデータの時代にデータの意味を理解せず、鵜呑みにすることは危険である。
古くからブルーバックス(講談社)の「統計でウソをつく法」(ダレル・ハフ著 高木秀玄訳)のように統計によるウソを指摘する著書は多い。
データ、データ加工の前提を知っているか、知らないかが問題なのだが、正しく知れば便利なデータも分からないからとすべてを信用してしまえば騙される、勘違いして間違える危険性は高い。
学生に「カラスの話」をすることがある。カラスが飛ぶ高さ地上30mが高いか低いかと訊けばほとんどの学生が高い、あるいは低いと答える。
この時点ですべて間違えなのだが、数値で表示されるとなぜか正しいことのような錯覚を起こす。まして、これがGDPなど自分の知識を超えた経済の話や複雑な話になると「自分が分からいこと=すごいこと、それを話す人はすごい人」というような錯覚を起こす。
数値を使って人々を煙に巻き、自分の思うように扱うこともできてしまうから怖い。
前述のカラスの話の結論は、地上30mは事実であっても基準がないから高い、低いという判断が成り立たないというのが正解だが、誰もそのような訓練をされていないと事実データがあったとしても自分の感覚だけで判断してしまう。測定は科学的でも判断は実に旧態依然としており感覚に頼から、これでは高い精度の測定などいくらしても意味がない。

また、よくある間違いが平均に対する誤解である。
様々なデータを見るとき、そのデータがどのようにして求められたものなのかを省略してあるケースがある。
たとえば平均年齢50歳というと皆、あるいは多くの人が50歳(前後)であるような錯覚を起こす。しかし、100歳と0歳の平均は50歳だから実際には50歳の人が一人もいなくても平均年齢50歳がそのグループを代表する値となってしまう。
特定グループの年齢を代表して表す数値には、その他にも各人を年齢順に並べて真ん中の人の年齢を代表とする、あるいは最も人数の多い年齢をそのグループの年齢の代表とするなどがある。
また、どのような人たちのグループの平均をとっているのか、何人の平均をとっているのかなども重要になる。特定地域で住民の平均年齢を調べるのと、企業の社員、あるいは大学の学生寮で調べるのでは違って当たり前だし、人数によっても変わってくる。

平均だけでも、これだけあるわけだから、様々なデータが数値化されてくると、よほど数値の前提がわかっていないと判断を間違える。
POSデータなども、これしかないから仕方なく使っているが、単純に販売数量合計だけで見ていると取扱店舗数や取扱期間が違っていたり、初めから投入数量(売場在庫)が違っていたりなど、販売データに直接関係するような条件が全く違っていたなどということもある。

データが科学的かどうかというよりは、データをとる人、加工する人、見る人が科学的かどうかが問題になるということだろう。

小売業 データ活用のキモ、商品分類表は何のためにある⁉️

■使えない商品分類表
小売業に限らず、商品を取り扱う企業であれば、必ず商品分類表なるものをもっているはずである。
筆者もバイヤー時代に商品分類表の修正をやったことがあるが、商品分類という言葉から、どうしても商品を細かく分けていってしまう。
素材、デザイン、色、ブランド、….等々。素材も綿、ウール、ポリエステル、ナイロンなど素材成分もあれば、糸の種類、生地の織り方、表面加工、染め方・プリントの仕方など細かく見ていけばきりがない。
デザイン、色に関しても同様であり、正確に分類しようとすればするほど細かくなっていく。
一方、商品分類には情報システム上、必ず単位とコードがある。
部門、ライン、クラス、あるいは大分類、中分類、小分類などであるが、単位の数の桁数に合わせて、それぞれ0~9の数値が割り当てられるために、通常、最大で1つの単位は10まで、2桁使える場合には100までの分類が可能になる。

すべての間違いは、細かく分ける、10、あるいは100まで分けられるというこの2つの条件を前提に商品分類表を作ることによって引き起こされる。

商品分類表は、仕入から販売までのデータをまとめる入れ物の役割を果たす。
売上、仕入、在庫、値入、値下、粗利、…..等々、様々な項目について数量、金額、率などを集計する際の単位となるから、現実問題として、データを分析する際の単位、言い換えると計画する際の単位がどのようなものであることが最も実態をよく表し、また作業しやすいか、データを扱いやすいかという「使い方=目的」を重要視する必要がある。
かつて、ある企業は2,3年ごとに商品分類を変えていたため、長い間、昨年比を正確にとらえることができなかった。
また、別のケースでは、あまりにも細かく分けすぎたために、それぞれの分類単位の占める比率が細かすぎ、また作業も煩雑なために、まともにデータを分析することができなかった。
商品分類表を見れば、ある程度その企業のデータ活用のレベル、さらには情報システム(活用)に関する理解度のレベル、情報システムの完成度(業務とのマッチング)を知ることができる。
重要なことは、どれだけ多額の投資をしたかという情報システムの金額ではなく、実際に業務の精度を高めるためにどれだけ使いやすいか、有効活用できるかという効率や貢献度合いである。
データばかりたくさん取れてしまう時代になったが、その割にはデータとは何か、どう使うのがよいのかという最も基本的なことに関する理解は今一つ進んでいないように思える。
デジタル分野は急激に進化したが、現実とデジタルが持つ能力をつなぐ人間の頭、思考技術はまだ周回遅れにある。20世紀の遺物である情報システムや思考回路が残って幅を利かせていることを考えれば、進化は当分の間、遅々として進まないのだろう。
上野陽一先生ではないが「こうしちゃおられん」という気分である。

勉強って何?

テレビで中学受験を追いかけた番組企画を見る機会があった。また、勉強ができる子はどのような勉強の仕方をしているかなどの記事を目にすることも増えたような気がする。
勉強は教えるが、勉強の仕方は教えていないなどという記述を見ると、それでは、そもそも「勉強とは、いったい何だと解釈しているのだかろか?」と疑問に思ってしまう。
「勉強しろ」といっても「勉強の仕方」は教えない。「勉強の仕方を教えてないじゃないか」と疑問を呈している人が、実は「勉強とは何か」については触れずに、算数はこうして、英語はこうしてという標準作業の提案をしている。
これでは、いつまでたってもクリエイティブな子供など育つはずがない。
もし、テストの点を取りたければ、AIを用いている塾の方が合理的だろう。
テストの点は問題の範囲、傾向、解き方のテクニックなど、いくつかの要素に分けて分析し、取り組めば確実に上がることは分かっている。それを合理的に行うAIのプログラムも開発されて効果を上げている。
問題は、テストの点数が悪いとダメという決めつけ、勘違い、それ以前に「勉強とは何か」という最も基本的なことを明確にしない教育の構造とそれに気づかずにテストの点数、標準偏差値ばかりを追いかけている大人たちといったところだろうか。
どう考えても、もっとも重要な幼児期から小学校、中学校で「勉強とは何か?」ということが理解できていないから、教え方も教えている内容も違っているのだろう。
「勉強」は「いろいろなことに興味が持てるよう好奇心や観察力を養うこと」であるし、「モノ・コトを分かりやすくするための工夫」であるはずだが、どうも知識やテストの点を取ることと勘違いされる。
別に知識を否定しているのではなく、知識ならWeb上にたくさんあるから、それをコンピュータと競争しても始まらないことに早く気付くべきだと考えているだけである。
いわゆる賢い子は、知識の得方、記憶の仕方、論理の組み立て方などを工夫して、自分なりのパターン、法則を見出して使っている。
テストの点数の取り方=あるパターンの問題の解き方を覚えても使わなければすぐに忘れる。そんなことに大切な成長期の時間を費やすことなどもったいなくてしょうがない。
以前も別項に書いたが、義務教育、今の間違った教育体制を拒否する権利が必要である。
重要なことは、いろいろなモノ・コトに興味を持ち、観察して情報を得、それを工夫して理解しやすく整理する(法則性を見出す)能力=実技を身につけることである。
この能力は、状況が変わっても、表面的な知識が陳腐化しても活用できる。一定の範囲に限定されるが、よほどのことがない限り高い普遍性を持つ。
そのような能力を身につけるために、決して答えを与えず(質問によってヒントは与える)、自ら工夫して能力を開花する手伝いをすることが本来の「教育」のはずだが、今はそれを大きく外れて考える、工夫するというチャンスを奪ってしまっている。
少なくとも文盲率が高く、「読み・書き・そろばん」が重要だった時代のままが現在の教育というのでは、子供の可能性をはじめから否定しているのと同じである。

強い商品部組織をつくるための業務デザイン

◆強い商品部組織をつくるための業務デザイン
商品部組識のあり方、果たすべき機能について定説はなく、各企業の生い立ち、考え方、業態、企業規模、企業の成熟度合、仕入形態など、様々な条件により異なっている。
歴史的に見ても、人の移動に伴って様々な企業・業態のやり方が、人に付随する形で他の企業・業態に移植され、そこでまた独自の進化をするというように様々な考え方、手法、形態が交雑する形で出来上がっている。時として、MR(市場調査)、差益など、使う用語で出身企業が分かったように、それぞれの企業が独自の歴史、企業文化を持っており、それらが交雑すれば組織として一つのまとまったものが出来上がることは難しい。
したがって、多くの場合、業務/組識は、業務設計などの理論に基づいてアルベキ業務/組識が設計されたのではなく、 実践の中で交雑と修正を繰り返しながら現在の形に収束してきた。
組織を作ってきた人、組織の歴史、風土など様々な要因によって、様々な組識形態をとりながら流動的な運用が行われて来たというのが小売業の歴史である。
それらの状況が特に集約されて、顕著に表れているのが、商品部、販売部、店舗運営部などの営業部隊であり、部門構成や商品分類体系などの管理体系である。
しかし、様々なレベルにおける交雑の結果は、一つの思想、理論に基づく理路整然とした体系にはならない。いつの時代も課題としてあげられるのは、商品部と販売部の機能(役割)/責任分担、特に重要な役割を果たすと考えられる商品部の機能、業務の仕組み、手法、人材育成などである。
多くのチェーンストアにおいて商品部組識は、業界( メーカー、卸など )出身者によって形成されてきたという歴史がある。既にほとんどのチェーンストアでプロパー社員に入れ替わっているが、商品部組識にはこのような人達によって職人的、ブラックボックス的に運用されてきた名残がある。組織的、科学的なシステム(仕組)、技術・ノウハウではなく、個人の経験・ノウハウに依存している点である。したがって、いつになっても人材育成ができず、個人の人脈、センス・能力、モチベーションなどに頼る状況から抜け出せないでいる。
「販売技術」「商品構成技術」など、現場で行われてきたことを製造業のように「技術」として認識し、体系的にまとめてこなかった結果である。

一方、POSの導入によって商品登録・マスターメンテナンス、データ分析という煩雑な作業が加わり、さらに輸入商品などアイテム数の増加に伴い間接作業的業務は著しく増加している。さらにデータ分析が標準化されていないこともあって、個々人のスキルによってデータ活用のレベル、データ加工に要する時間も大きくばらついている。
既に、個人の能力だけで全てを処理できる状況にはなく、組織として、どのような機能を果たすべきか、そのためにデジタル技術をどのように活用し、どのような業務(仕組)/組織/システムによって対応すべきかが非常に重要になっている。
当然、これだけデータが増えた状況を考えれば、商品部/販売部組織内(あるいは外)にデータを一元管理し、意思決定を含む様々なレベルのマネジメントの精度を高めるためのサポート機能/専門部署が必要なことは言うまでもない。
ここでは、商品部組織に重点を絞っているが、MD(merchandising)全体を統括することを考えれば、商品部、販売部など組織を問わず、営業面を一元管理する全社の共通言語ともいうべき情報システムの構築は不可欠である。
*単にデータをストック、排出するだけの情報システムではなく、個別に2次加工、3次加工を施さなくても、意思決定にそのまま使えるように加工された帳票、グラフをアウトプットできる情報システムが必要である。
しかし、多くの企業でデータ量の多さ、情報量の多さこそが業務の精度を高めるという錯覚、勘違いがある。業務プロセスのそれぞれの段階で意思決定に必要な情報は限られるが、その区別なく、ソースデータに近い状態で全てをプールし、干し草の山から針を探すような作業を強いれば、時間などいくらあっても足りなくなる。しかも、データ活用については組織として明確な標準も定義も無く、業務は個々人のやり方に任せていれば、データのとり方、加工方法、活用方法もマチマチになるから組織としてのレベルは維持できない。
現実問題として、辞令が出ればその日からバイヤーとして業務に当たらなければならないが、標準化されない業務実態が商品部、バイヤーを混乱させているのは多くの企業に共通する事実である。
以前であれば、「仕事は自分で作るもの」「技術は盗むもの」などと言って済ませることもできたが、今はそのような時代ではない。
ディストリビューターもまた同様である。バイヤーとの棲み分け、補完関係など、役割分担は実に曖昧であり、ディストリビューターしての業務機能が明確に定義されているケースは少ない。
スーパーバイザーにいたっては、バイヤーやディストリビューターのような商品に関する権限もなく、店舖に関する権限も持たないケースがほとんどである。組織的にどう位置付けるかという問題がクリアできない限り、権限が曖昧な状態で各部署を回って頼みごとをするしかない。業務設計がなされていないと形骸化した非常に中途半端なポジションになってしまう。
いずれも、共通するのは組識・役職としてどのような機能を果たすのか・業務を行うのか、ということが曖昧なまま組織を作ってしまった結果である。
このような場合、結果として「任に当たる人」に仕事の組立てを依存するため,人によって業務内容、果たす機能、手法、ネゴシエーションなどが異なり組織的にも安定しないし、人が変われば継続できない。
◆業務設計
業務/組識設計の手法に業務機能分析、T(Task:課業、仕事)/R( Responsibility:責任部署 )マトリックスという手法がある。T/Rマトリックスは、業務機能分析により明らかになった業務機能をモレ、重複、偏りが無いように組識に割り付けるための手法である。
業務機能分析では、業務を目的的にとらえ、業務機能という観点から全体を体系化していく。必要となる業務機能を設計的にとらえるため、モレや重複がないように設定することができる。この業務機能の体系を基に機能的なモレ、弱体、重複などの問題点を発見し、改善していく。
このような考え方、手法を参考にして商品部組識の問題点とアルベキ姿を検討してみる。
規模にもよるが、組識的に未成熟・未分化な状況では必要と考えられる機能が曖昧であり、明確に業務/組識の中で位置づけられることは少ない。
図表-1 業務機能と役割分担では業務機能を大きく取引先関連、商品関連、新店・改装関連、販促・チラシ・POP関連、コンピュータ関連、データ分析関連、他部署関連、店舗指導関連というように8つのブロックに分け、さらに主要な業務機能60をリストアップしている。
責任部署・役職としては、商品部=マネージャー・バイヤー・業務担当、ディストリビューター部=マネージャー・ディストリビューター、スーパーバイザー部=マネージャー・スーパーバイザー、販売部=マネージャー・スタッフ、店舗=店長・マネージャーを設定している。
①このマトリックスを用いて業務機能を各部署・役職に割り付け、また実際の運用状況を確認する。
自社の考える業務、あるいは実態として行われている業務の中にモレや弱体(機能の達成レベルが低い)、重複(複数の部署が同じように行っている)、偏りなどがあるかどうかを確認する。
図表-1をヒナ型にして自社版を作成し、確認すると良いだろう。
②次に、自社の現状組識を考慮してどのような役割分担になっているのかを確認する。
もしも明確な業務の記述ができない(明確な業務機能を持っていない)部署があれば検討し、修正する。また、業務機能との対応が極端に少ない(漠然とした業務しかやっていない)、あるいは極端に多い(業務機能が一ヶ所に集まり過ぎているため実際には達成レベルが低いことが多い)部署があれば組織的な役割分担に問題があると考えられる。

◆組織のパターンとポイント
図表-2 組織的な組合せのパターンは商品部に関する基本的な組み合わせのパターンを示したものである。通常は、バイヤー(以下BY)、ディストリビューター(以下DB)、スーパーバイザー(以下SV)が一般的であるが商品部の事務的な業務の処理を考えて業務担当を加えている。
BYの担当範囲に定説はなく、ホームセンターなどでは一人で10,000SKU近くも持っているBYもいる。実際には取引先に依存せざるを得ないので、BYが独自の戦略に基づいてどこまで商品構成を行っているのかは定かではない。ただし、多ければ多いなりに商品を層別してグルーピングするクラシフィケーション(classification;商品特性の類似性によってまとめられた群管理)のような手法が有効であり、状況に応じた手法を使い分ける知恵が必要になる。
また、あまり細かく担当を分け過ぎても商品群間でスペース、在庫枠、仕入枠などを調整する自由度が小さくなり、バイイングがしづらくなる。
また、一人のバイヤーが複数の業態にまたがるバイイングを行うことも避けた方が望ましい。業態の違いを表現するための簡単なやり方として取引先をかえるという手法もあるが、同一バイヤーが同じ商品群について業態の違いによって複数の取引先を使い分けることは物理的に言っても難しい。
また、SVについてもコンビニエンスストアが一人のSVが担当する店舗が8から10店であることを考えると、ある程度商品の範囲を絞ったとしても同じぐらいの店舗数が望ましいだろう。1週間に5日、1日に2店舗ずつまわると必ず1週間に一回は全店をまわれることになる。
(1)パターン1;BYのみ
一番シンプルなパターンである。小規模な企業で機能的にも未分化な企業に向く。店舗数が少なく、本部コストをあまりかけられない場合、このような形態を取る。BYの人数も少なく、一人のBYが担当する商品の範囲は広い。
BYが果たす役割は大きく、全てを一部の人が動かしている。商品的には取引先に依存する部分が大きい。
(2)パターン2; BY+ 業務担当
パターン1のBY業務が煩雑になり、対応が難しくなってきた時に向く。業務担当がBYの秘書的な立場で商品登録などの事務処理を担当することでBYの負荷を軽減し、本来業務のウェイトを高めることが可能となる。ただし、パターン1とは本質的には変わらない。
(3)パターン3; BY+ DB
パターン2とは明らかに思想が異なる。パターン2が事務処理のために業務を置いたのに対し、DBを置く場合は、明確な機能を持たせることを前提としている。DBはあらゆる段階( 取引先から店舗 )での商品コントロール機能を前提とする。
従来、BYだけではできなかったような数値による客観的商品コントロールや投入パターンの設定などをDBが行うことで業務の精度が高まる。
(4)パターン4;BY + 業務担当 + DB
かなり組織的には機能分担が進んだ状況である。業務担当が事務的な処理を集中して行い、DBが店舗との対応を含めた商品コントロールに当たる。そうすることでBYは、取引先との対応、商品企画・開発など、より戦略的に動くことが可能になる。
(5)パターン5;BY + SV
パターン2,3と同じようであるが思想としては全く異なる。BYが商品の仕入、投入を担当し、SVが店舗の指導に当たる。ただし、対BY、対店舗という点で SV の権限の設定が難しい。SVの権限が無い状況ではパターン1のBYのみの状況と本質的に変わらない。
(6)パターン6;BY + 業務担当 + SV
この場合、店舗指導としてSVがいるためその分BYは業務担当に対してDB的な機能を要求しやすくなる。パターン4がどちらかと言えばBY,DBによる本部主導型であるのに対し、パターン6はより店舗に近い形であると考えられる。
(7)パターン7;BY + DB + SV
現在ある一番オーソドックスなパターンである。しかし、組識だけ分かれていて実際の運用では業務機能が曖昧であることが多く、BY,DB,SV間の機能分担は難しい。BYについては、商品の仕入を行うということで比較的業務機能としても明確であるが、DB,SVの果たす役割となると設定次第で変わってしまう。特にDB,SVに関しては業務機能が明確になっていないために失敗するケースが多い。やはり、組織図から入るのではなく、業務機能を明確にした上で組識に割り当てる必要がある。
(8)パターン8;BY + 業務担当 + DB + SV
通常はパターン7までであり、ここまで分化するケースは珍しい。ただし、BYの業務分析を行うと、POSの商品マスター登録・メンテナンス、チラシ原稿の作成、新店・改装に伴う陳列・販売応援など本来業務とは関係ない「作業」に費やされている時間が50%を超える場合すらある。このような場合、その分の人時を人数に換算して別の役職を作り、機能分担
をすることでより本来業務に集中できるので効率は上がる。ただし、組織的には細かく分かれれば分かれるほど調整が必要になり効率は落ちる。したがって、本来業務に集中できるメリットと機能分化したために発生する調整というデメリットのバランスをどこで見極めるかが重要になる。

◆まとめ
商品部組識は、個々のバイヤーやマネージャーが果たさなければならない業務機能が曖昧であることが多く、実際には個々の能力の範囲、自分流の考え方、やり方で業務が行われることが多い。チームMDも言われるようになっているが、それはプロジェクトを組むような大型の案件に限定される。
重要なことは、組識の形ではなく、そこで設定された業務機能が明確であり、モレや弱体、重複、偏りが無いことである。
また、意思決定プロセスにおけるデータ、情報活用など、共通言語としての手法の標準化も重要である。
現在のようにデータが溢れ、しかも変化の速い時代には、本来業務を的確に行える組織の方が強い。単なる思い付きのバイイングや機械的な作業の繰り返しではパフォーマンスのクオリティが低く、業務機能を確実に果たすことは難しい。
業務機能とそれを達成するための具体的な業務(仕組)/組識のバランスが取れた組織を実現することが必要である。

売場の数値分析-2 分析した後どうするのか⁉

◆なぜ、分析をするのか?、分析した後に、何を、どうするのか?

1.何故、分析をするのか、分析の目的によって使用するデータ、分析の仕方は変わる

分析の目的によって用いるデータ、加工の仕方=検討の仕方が変わるから、分析を行う際には、目的を明らかにしてスタートする必要がある

たとえば、来週以降の売上を予測することが目的であれば、過去数週間、および昨年、あるいは過去3年の同時期前後数週間の売上・客数・客単価、仕入、在庫など数値の推移、売上に影響を与えたと考えられる天候、自社・競合他社の販促などの周辺情報、売場のつくりや売場体制、在庫・仕入・粗利率など様々な情報を検討することで、売上変化の仕方(法則性)、売上に影響を与える要因と影響の仕方などを把握することができる。多くの情報は「モレがない」という意味では有効であるが、その中から特に重要と考えられる要因を特定することで予測の精度を高めることができるから、イタズラに多ければよいということにはならない。

もう少し、的を絞り、たとえば来週の発注をどうするのかについてアウトラインを整理するのであれば、過去数週間の商品構成・在庫構成、主要商品群の売上・在庫・仕入の状況(特に数量)、および過去の同時期における同様の情報、あるいは主要アイテムに関する同様の情報について整理する。
この場合、いずれも知りたいことは、対象となる商品やトータル売上の時系列推移であるから、商品の数量、および、部門、ライン、クラス、主要商品群などの売上金額を対象として、過去にはどのような時系列変化をしているのか、そのデータに影響を与えた要因、影響の仕方について確認できるような情報が必要になる。
一般的には折れ線グラフに結果のデータを整理した時間軸をベースにして、結果に影響を与えると考えられる要因を時間軸に関連付けて整理する。結果と要因との間に一定の因果関係が確認できれば、それを利用し、要因をコントロールすることで結果をコントロールすることが可能になる。
時間軸には、時点、期間、時系列があるが、この場合は時系列を用いる。

2.データがあるから分析をするという本末転倒なアプローチは難しい

たとえば、POSシステムのような元々システムの目的が様々な業務の効率化であり、商品構成の分析・改善を前提としていないシステムの場合には、データが取れるから、何かうまい具合に分析に活用できないかという発想で取り組むことになる。
しかし、POSシステムのベースにあるJANコードのコード構成を見ればわかるように、本来の目的は商品のSKU識別が目的であるから、一般的な商品構成の分析・改善に活用しようとしてもかなり無理がある。
JANコード標準タイプ(13桁)は、①GS1事業者コード(JAN企業コード 9桁または7桁)、②商品アイテムコード(3桁または5桁)、③チェックデジット(1桁)で構成されている。
何と言ってもJANコードを用いることで得られる最大のメリットは、納品伝票、送り状などの手書き、レジ精算における手入力が不要になったことである。
当初、アメリカではレジの不正防止が重要な目的とも言われていたが、人の手を介することなく自動入力する事務作業などの効率化が目的であるから、MD(マーチャンダイジング)は当初から重要な目的として考慮されていない。(日本ではOA:Office AutomationやFA;Factory Automationと語呂合わせでSA;Store Automationなどという言葉が使われたことで、POSによって自動で商品改善ができるような大きな勘違いが生じている。)

POSでは販売するたびにたくさんのデータが取れてしまうので、何か途轍もなく精度の高く高度な商品分析ができるような錯覚を起こしているが、データが多くてもデータが目的に合致となければ何の役にも立たない。たくさん取れるデータ活用として苦肉の策が、売れ筋把握や死に筋把握というものであるが、販売情報だけで在庫数やフェイス数、販促などについては分からないから、単純に各商品がパラレルな状態(相互に影響しあうことなど考慮できない)で売上の大小を比較してもあまり意味があるとは言えない。
実際にある食品スーパーで昼前後に鮮魚の売上点数が極端に減少し、その後夕方になって回復したことから買物が昼に途絶え、夕方に集中すると解釈していたが、客数や在庫がなくならない冷凍魚などのデータでは昼もそれほど売り上げは減少しておらず、よく調べてみたら、昼は売り上げが少ないからと補充されず、単に売場在庫がなかっただけといったこともあった。
欠品で売上ゼロなのか、在庫をたくさん抱えて売上がゼロなのかの違いは在庫を確認しない限り分からない。POSデータを鵜呑みにしたことによる勘違いは改善効果ではなく、間違った行動をつくり出してしまう。

また、商品アイテムに振られた3-5桁の通し番号では商品の識別はできるが、コードに意味を持たせることができなければただの数値の羅列であり、コーディングによるデータ活用を全て放棄してしまうことになる。大昔にあった3連タグでさえ、コードに意味を持たせることでどのような商品特性のグループが売れているのかという売れ方の特性を知ることができた。そのことを考えれば機械化し、データがたくさん取れるというだけで、マネジメントツールとしての機能は大きく後退している
3-5桁あれば、アパレルであればデザインやモチーフ、素材、ブランド、シリーズなど様々な分類情報を設定することができる。つまり、単品情報だけでは分からない様々な商品特性の情報を商品に持たせることができ、それによって売上のデザイン比率、素材比率などが曜日・時間帯など時系列でどのように変化しているかも知ることができる。しかし、POSのような単品識別コードによって何らかの商品特性による分類をしようとすれば、商品マスターに新たなコードを付加するなり、何らかの形でフラッグをつける必要がある。残念ながら、現在のJANコードの構成ではそれができないから、別枠で分類コードを持たせる必要がある。

結局、目的から入れば、データの持たせ方や集計の仕方、分析の仕方など全てが一貫して設計された状態にあり、分析後の対応もスムースに行くが、ただ単に商品に機械的に通しNO.でコードを振り、何らかのデータが取れたから、何かできないかというのでは、せっかくのデジタル技術の進歩も活かすことはできない。
とりあえず、データを取っておけばどうにかなる、データがあるから分析するという現在の情報システムの在り方では使えないものに多額の費用と労力を投入しているだけで終わる。
長年に渡るPOS、JANコードの歴史からはMDのマネジメントに有効な仕組みが何も生まれなかったことを考えれば、システムの設計思想(事務手続きなどオペレーション改善目的か商品構成・売り場づくりなどマネジメント目的か)とその活用に対する期待のミスマッチがどれほどのものかがよく分かる。
目的を明確にし、そのために必要な情報を整理することがなければ、ただいたずらに意味のないデータ、情報をたくさん垂れ流しているだけである。

3.分析後に状況をどう修正するのか
図表1は、ある企業の売場マネジャー用マニュアルに掲載されていたものをベースに筆者が修正を加えたものである。
売上、在庫、粗利に関して数値ではなく、単純化して〇、✖の8パターンに要約してある。これら8パータンについて想定される状況と検討内容、対応策さえ整理すれば、細かな数値にこだわることなく、基本的に売場で起こり数る状況の把握と対処がスムースに行われるようになる。

特に売場における数値分析では、その特性からポイントとなる注意点がある。
売場は常に変化しており、精度を求めて分析に時間をかけすぎると、その間に状況が変化してしまうことがあるから、迅速であることが求められる。
方向性さえ正しければ、精度よりもスピードが重要ということになる。

データが溢れるようになると、分析の精度をとやかく言う人もいるが、重要なことは、もともとあるデータが果たして目的に対応した適正なものであるか否かであり、そのような意味では前述のように売場にたくさんあるデータが必ずしも有効なデータとは言い切れない点を考慮する必要がある。
分析のための分析よりは、現状改善のための分析が適切に行えるようになるまでにはまだまだ時間がかかるのだろうが、デジタル化が進めば進むほど、本当の意味を理解しないままデータを振りかざす人、データに振り回される人が増えるのかもしれない。

攻めの発注、攻めの在庫管理

◆攻めの発注,攻めの在庫管理
技術が進歩し,さまざまなシステムが開発されることによって,売場の業務は便利になっている。これらの便利な道具を使いこなすことができれば,従来と比べてはるかに少ない投資で精度の高い業務が行えるはずである。しかし,一方では売場の人員が減り,パート・アルバイト化が進んだことで,売場における常識,基本項目の徹底が難しくなっているのも事実である。
ここでは,店舗における最も基本となる発注・在庫管理について,基本項目,および重点ポイントを改めて確認していく。(*すでに自動発注によって売場では発注しない、あるいはPOSデータや気象データなどのビッグデータ、AIを用いて発注を自動化することも技術的には難しくない時代になっている。しかし、発注をブラックボックスとしてその構造、メカニズムを現場の人間が全く知らないというのも困ったものである。)

1. 発注と在庫管理の基本の確認
1-1.在庫の意味・目的と在庫管理
(1)在庫の意味・目的
メーカーと違い,昔から小売業では『なぜ在庫が必要か?』ということを余り真剣に考えることはない。店を開くには店舗と商品が必要であり,『商品経営』という言葉があるように,どんな時でも商品在庫があることは当たり前であったからだろう。
しかし,EC(電子商取引)が普及し、個別店舗に在庫を持つことなく、商品販売を行う業態が一般化する今,改めて『なぜ在庫が必要か?』ということを見直すことで、発注や在庫管理を再考することも必要である。
在庫ゼロの生産システムとしては,トヨタのカンバン方式がジャスト・イン・タイムとしてよく知られている。
カンバン方式は,原材料・部品から完成品に至る総ての製造(社内外)を完全に同期化(タイミングを合わせる)することで中間にある仕掛かり在庫をなくす。しかし,製造途中で機械故障や不良品が発生し,計画通りに運営できなければ,複数の企業にまたがる製造ラインは止まり,多大な損害が生じる。少しでも,そのような可能性がある限り,損害を最小限に止めるために『トラブルが解消するまでの時間を凌げるだけの在庫』を各工程の中間に持つ必要がある(複数企業のまたがる場合は前工程にあたる企業が負担)。
通常,在庫の持つ機能(役割)は『欠品というトラブル=衝撃』に対する『クッションの役割=緩衝機能』というように説明される。
(2)小売業にとっての在庫・在庫管理
一方,小売業では『欠品』によって生じる衝撃はメーカーと違って目に見えにくい。多くの商品を扱い,しかも商品は時間と共に変化していく。例え商品の一部が一時的に欠品したとしても,そのうちに商品が入れ替わってしまったり,補充されたりするので,改めてお客に訊かれるまで誰も気が付かないということも珍しくない。

小売業における在庫と欠品の意味を整理すると,次のようになる。
メーカーが商品をつくるのには時間がかかるし,それを店舗に運ぶのにも時間がかかる。お客が『必要な商品』を『必要な時』に『必要な量』『適正な価格』で入手できるようにするためには,トヨタのカンバン方式のように,予めお客の要求を正確に予測して商品を手配するか,そうでなければ製造や輸送に要する時間,お客を待たせないだけの『在庫』を持つ必要がある。『お客が必要な商品を,必要な時,必要な量だけ,適正な価格で入手できるようにする』ことは,お店に買物に来るお客の要求を満足するために最低限必要となる条件である。
お客に対して満足感を与える度合いをお客に対するサービス・レベルという。サービス・レベルの中には,店舗がキレイであるとか,駐車場が何時でも待たずに入れる・停めやすい,あるいは,販売員が丁寧に応対する、…などということも含まれる。
もしも,お客が要求する商品がいつも欠品していれば,お客の得る満足度は低く,サービス・レベルは著しく低いということになる。このようなことが続けば,お客は他の店に行ってしまい,チャンス・ロス=売り逃しが発生するから,競合他社との差別化を図る上で重要な要件となる。
一方,いつ,どのような商品を,どのくらいの量,買いにくるか分からないお客に満足してもらうためには,たくさんの商品を仕入れ、在庫しておく必要がある。そのためには,たくさんの商品を置く広いスペースが必要であるし,商品を購入し,在庫するための莫大な資金も必要になる。しかし,広い売場にどんなにたくさんの商品を並べてみても,お客が必ずくるとは限らないし,商品も変化していくからお客の要求に100%応えることは不可能である。
したがって,お客に対するサービス・レベルを一定以上に保ちながら,なおかつ売場スペースや資金の効率(在庫という投資とそれによって得られる売上や利益のバランス)を考えた在庫の設定=在庫管理を的確に行っていく必要がある。

在庫管理では,一見相反するサービス・レベルと効率を上手くバランスさせる(トレード・オフ 取捨選択)ことが重要であり,そのためには,お客にとっての『必要な商品』『必要な時』『必要な量』『適正な価格』という『商品の売れ方(裏を返せばお客の買い方)』についてよく理解しておく必要がある。

1-2.発注の目的と発注手順
(1)発注の目的
発注は,商品の売れ行きに応じて,在庫する商品の入荷を決めるものであり,在庫管理を行う上でひじょうに重要な意味をもつ。
また、在庫と密接に関係する『発注』の意味・目的を考えると『発注とは,売場に必要な商品を,必要な時,必要な量,適正な価格で陳列・補充するための手続き』であり,『発注することによって,売上と在庫のバランスを一定に保つ』ことが目的である。したがって,発注商品,発注数量を決め,入力,送信することはあくまでも『発注』業務の手続きでしかなく,発注された商品が納品されたことを確認し,売場へ陳列・補充することで,はじめて発注の目的が達成される。
発注は,商品の売れ行きに応じて行う必要があり,発注の精度が悪いと売上と在庫のバランスが崩れて『欠品』や『過剰在庫』を引き起こす。
『欠品』や『過剰在庫』は,現象的には個々の商品の売上と在庫のバランスが崩れた状況を意味するが,それらが積み重なることで売場全体にさまざまな悪影響を及ぼす。

①欠品
欠品は,商品が『ない』状態を意味するが,『ない』状態にもさまざまなケースがある。
例えば,ⓐ商品は売場にないが,バックヤードにあり,品出しされていないケース,ⓑ商品が売場にもバックヤードにも全くないケース,ⓒ売場に商品はあるが,一定の基準量(最低在庫数量,あるいは最低陳列数量)を割り込んでいるケースなどである。
ⓐは,作業指示,作業スケジュールなどの問題が大きく,ⓑは売上予測や在庫設定,結果としての発注数量設定の問題によって発生する。いずれの場合も売場に商品がないということでは同じであり,チャンス・ロス(商品がないことで売上を上げる機会を逃す)が発生している。個々の商品で見れば,本来得られるはずの売上を逃しただけであるが,このような状況が繰返されることで,お客に対するサービス・レベルが低下し,店全体の客離れにつながる。
ⓒの場合は,次のような理由から欠品と見なす。
基本的に,たくさん商品があった方が売場で目立ち,購買意欲を刺激してよく売れる。売場に多少商品が残っていても最低陳列(在庫)数量を割り込んでしまうとボリューム感がなく,在庫がたくさんある状況よりも販売数量が減少する。販売数量が減少した分(実際には,実験などでデータを採り,そこから推測するしかない)をチャンス・ロスとみなせば,このような状況も欠品の一つのパターンということになる。
たとえば、刺身を買おうとした時、売場に2~3パックしか残っていないと、いかにも売れ残りのようであり、買うのを止めてしまう場合がある。このようなケースである
②過剰在庫
過剰在庫は,欠品とは逆に売上と在庫のバランスが崩れ,在庫が多すぎる状況である。
過剰在庫は,構造的に深刻な問題を数多く引き起こすことがよく知られている。
在庫が増えることで,売場に出ない商品がバックヤードに置かれ,商品鮮度が低下する。これらの商品が値下げにつながれば,荒利率の低下を招く。さらに,在庫が増えることで仕入が抑えられると,持っている在庫の内,よく売れる商品から在庫が減り,売れない商品ばかりがいつまでも残る。その結果、相対的に売れる商品の在庫比率が下がり,売れない商品の在庫比率が高まる。結局,全体的な在庫内容はさらに悪化し,売上、粗利まで低下する。
また,バックヤードに不良在庫が増えることで,ムダなハンドリング(物の取扱い)が増える。作業効率が低下するばかりでなく,商品在庫を確認する手間も増え,在庫を数え違えて余分に発注したり,逆に発注をもらすなど,発注の精度まで悪化する。
発注精度の悪さから生じた過剰在庫が,売上,荒利,作業効率の低下を招き,さらにめぐりめぐって,また発注精度を悪化させるという悪循環になると,抜け出すことが難しくなる。

(2)商品のタイプによる発注方法の違い
図表-1に示すように,商品にはさまざまなタイプがあり,タイプによって発注方法も異なる。ここでは,大きく定番商品(フェイス管理されている,フェイス管理しづらい),特売商品,チラシ商品,季節商品,日配商品,生鮮食品というように7つに分けて説明しているが,全体としては上の表のように,日配商品・生鮮食品のように日持ちせず,基本的にその日の内に売り切っていくような商品(在庫はゼロから2日分くらい)/在庫を持って販売していく商品というような在庫の持ち方,フェイス管理をして販売していく商品/大量陳列をして大量販売していく商品という販売方法,販売数量の変動が少ない商品/大きい商品という商品の売れ方の3つの切り口でパターンを分けることができる。
在庫の持ち方は,販売数量の変動の仕方,定番商品(フェイス管理)としての継続性,日持ち(D+α)≒在庫日数などの要素によって決まるので,その点に注意してパターン分けすると,それぞれの商品のもつ特徴が明確になり,発注,在庫管理上のポイントも分かりやすい。

(3)発注手順
上記の商品パターンの内,一般的な発注の流れを知る上で最も基本となるフェイス管理されている定番商品について,発注手順を整理すると図表-2のようになる。

① 販売数量の予測

発注する商品は,将来販売する商品であり,発注時点では,どの商品がいくつ売れるかということは分かっていない。したがって,発注数量を決めるためには,将来の販売数量を予測する必要がある。
発注の精度が欠品や過剰在庫を引き起こすので,販売数量を予測する際には,地域のイベント,過去の売上,発注実績,関連商品の販売動向などを参考にし,予測の精度を高めるように工夫する。
② 在庫数量の確認
発注数量を決めるためには,販売数量の予測と共に発注時点での在庫数量を確認する必要がある。特に,在庫が売場とバックヤードなど2ヶ所以上に分散している場合,在庫数量を数え違う場合が考えられるので,あらかじめ商品整理をし,売場に出る商品についてはなるべく品出しすることで商品をまとめ,在庫数量を確認しやすくする。

③ 発注数量の決定
基本的に発注数量は,販売数量予測と現在ある在庫数量,リードタイム(発注から納品までに要する時間)期間中の販売数量予測から算出する。
ただし,商品のタイプにより,発注の仕方が異なるため,詳細は,別項で説明する。
④ 納品確認と品出し
発注は,売場に商品が陳列されてはじめて目的が達成される。したがって,発注業務は,発注後の納品確認,売場への品出しまでの一連のサイクルとしてとらえる必要がある。

1-3.補充発注とOTB( Open To Buy )
前項に示したように,発注には大きく分けて2つのタイプある。
フェイス管理されている定番商品を対象とした補充発注,販売数量の変動が大きく,フェイス管理しづらい定番商品や季節商品などを対象としたOTB( Open To Buy )である。

(1)補充発注
補充発注の対象となる商品は,比較的販売数量の変動が小さな商品が多く,図表-3に示すように欠品を予防するための安全在庫数量(これが最低在庫数量)と最大在庫数量を設定した上で運営する。
この範囲内で在庫をコントロールすることで欠品と過剰在庫を予防する。
基本的に,発注数量の算出は,発注時点の在庫数量からリードタイム期間中に売れると予測される販売数量を引き,納品時点の在庫数量を算出する。この在庫数量と最大在庫数量との差が発注数量となる。
したがって,発注時点での販売予測と販売実績の差が生じれば,そのまま納品時点での在庫数量と最大在庫数量の差となって現れる。
在庫水準を下げ,発注時点における販売予測の精度を高めるために,リードタイムを短縮する仕組みづくりが盛んに行われている。しかし,一方では,年間で見ると,どんなに販売数量の変動が少ない商品でも週販数量で上下2倍以上の差があり,厳密に見た場合,現在用いている安全在庫数量,最大在庫数量という在庫基準自体が適正なものであるか否かという問題が残る。長年放置されている難しい問題であり,できる限り単純化して対応しているのが現状である。

(2) OTB( Open To Buy )
①OTB
OTBは,一般に仕入枠(発注)を管理することで,在庫をコントロールするための手法と説明されている。しかし,実際に使ってみると,仕入(発注)を増減する目的は『売上と在庫の関係をバランスよく維持する』ためであり,必ずしも在庫だけをコントロールしているわけではない。売上と在庫の関係が調和して変化していくように,売上の増減を在庫がうまくリードする。そのような状況を陰で演出すのが,仕入ということになる。
OTBは,金額をベースにして行う場合と数量をベースにして行う場合がある。
店,部門,大分類など単位が大きな場合には金額ベースで行い,中分類,小分類,アイテム・SKUというように対象とする単位が小さい場合には数量ベースを用いるなど単位の大きさによって使い分けるとよい。
ここでは,発注を前提としているので数量をベースにして説明をする。
②OTBのやり方
OTBは,季節商品など販売数量の変動が大きい商品で,在庫をある程度持つ商品を対象として用いる。売上ピーク時の欠品防止やピーク後の在庫の切り上げを上手く行うために用いると有効である。
OTBでは,商品を仕入れて販売し,残ったのが在庫というように,在庫を結果として捉えることはしない。
まず,はじめに売上計画ありきであり,在庫は商品を売るためにどれだけ商品を持つ必要があるか,という観点から設定する。仕入計画は,あくまでも売上計画と在庫計画から算出される結果でしかない。
OTB計画の作成手順は,図表-4(a)に示すように,売上計画の立案,売上を達成するために必要となる在庫計画の立案,仕入計画(仕入枠)の算出,という手順で行なう。
実際には,図表-4(b)に示すように売上実績が計画とずれてくるので,それに伴って仕入計画や在庫計画も修正しないと在庫は売上計画/実績の差異に応じて増減する。
この差異は,計画を修正しない限り,事例のように累積して膨らみ,最後には取り返しがつかなくなる。
事例では,売上実績が計画を大きく超えているにもかかわらず,仕入は計画通りに行っている。結果として在庫実績は減り続け,最後には売上の低下を招くことが予測される。逆に,売上実績が計画を割り続けている場合には,仕入を計画通りに行えば,在庫は増え続けていくことになる。
このように売上実績が当初の計画と大きくずれ込んだ場合,単に仕入計画を増減させることで在庫実績だけを当初の計画と合わせてみても,売上と在庫のバランス=商品回転率は当初の設定とは変わってしまう。したがって,単に仕入を修正するだけではなく,必要に応じて在庫計画も売上とバランスがとれるように修正する必要がある。
修正は,売上が変化したのと同じ比率で在庫計画を増減するようにすれば,商品回転率が当初計画と同じになる。あとは,このようにして計算上求めた在庫計画が売場スペースや売場作業から考えて実際的であるか否かを判断し,必要に応じて修正していく。売上が計画以上に好調であれば,商品回転率をより高めるように手を加えたり,逆の場合には,多少効率は落ちるが在庫の減らし方を押さえたりする。
これらの関係を整理したのが図表-4(c)である。
OTBを行う上で重要なことは, OTBの計画を立て,計画表に実績を埋め込んでいくことではなく,売上と在庫のバランスが時間と共に変化していく様子を計画という基準と照らし合わせて確認し,実際の売場運営の中で売上と在庫のバランスを維持し続けるように絶えず調整していくことである。
③売上/在庫/仕入の関係とOTBによるバランスの調整
図表-4(d)は,時系列で変化する売上/在庫/仕入の関係を整理したものである。
当月(週)と翌月(週)の売上を比べた場合,当月(週)よりも翌月(週)の方が,売上が高い(↗),同じ(→),低い(↘)の3つのケースが考えられる。
それぞれの場合について在庫の持ち方を考えると,もしも売上が伸びるのであれば当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を増やし,売上が変わらないのであれば当月(週)初在庫と当月(週)末在庫を同じに,売上が減るのであれば当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を減らせばよい。
その時の売上と仕入の関係は,当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を増やすのであれば,売上よりも仕入を増やし,当月(週)初在庫と当月(週)末在庫が同じであれば,売上と仕入を同じにし,当月(週)初在庫よりも当月(週)末在庫を減らすのであれば,売上より仕入を減らせばよい。
このように,売上の変化に応じて在庫を設定していけば自ずと仕入は決まってくる。
重要なことは,売上の変化をどのように想定するかであり,その時の在庫の持ち方をどのように設定するかである。

1-4.在庫数量の決め方と発注数量の決め方
在庫数量の決め方には,いろいろなやり方があり,絶対的な方法はない。先に述べたようにどんなに厳密な計算式を用いて算出したとしても,時間と共に変化する多種多様な商品総てについて検証することは不可能である。したがって,通常は,平均販売数量とリードタイム期間中の販売予測数量に単純な係数をかけて安全在庫数量と最大在庫数量を算出する場合が多い。
ここでは,比較的販売数量の変動が少ない,フェイス管理された定番商品を中心に説明する。
(1) 平均販売数量の算出
① 平均値とバラツキ
安全在庫数量と最大在庫数量を算出するためには,平均日販数量,あるいは平均週販数量を算出する。ただし,場合によっては単純に平均値を求めただけでは難しいケースもある。
例えば,図表-5(a)に示すように商品A,B,C,Dの販売数量が推移した場合,総ての商品の平均値は同じ15である。しかし,図表-5(b)のグラフのように整理してみると,平均値は同じでも,販売数量のバラツキ方に大きな違いがあることがよく分かる。
商品Aは一番バラツキが小さく,13から19と総ての値が平均値15の近くに集中している。バラツキの大きい商品Cは2から50,商品Dは0から42と販売数量の分布する幅(差=最大値-最小値)が広く,しかも計算上の平均値が15であるにもかかわらず,実際に15近辺の販売数量を示すことはほとんどない。
このように,平均値だけでは商品が売れている様子を正確に捉えることは難しい。
したがって,在庫基準を設定する際には,図表-5(a)に示すように販売数量の平均値だけではなく,最大値,最小値,幅(差)を捉えておくとよい。さらに正確に状況を捉えようとすれば,図表-5(b)のようなグラフを作成する(実際に総ての商品についてやることは不可能であるので,代表的な商品だけでも,そのような形で捉えておくとよい)。
バラツキの大きい商品の場合,単純に販売数量の平均値を算出し,それに係数を掛けて安全在庫数量や最大在庫数量を算出しても欠品を起こす可能性がある。
曜日による特性などを捉え,より実態にあった在庫の設定をする必要がある。

② 平均日販数量/平均週販数量
平均日販数量を求めるのは,発注,納品が毎日,あるいは隔日(月水金,火木土)の場合である。平均値を算出するには,算出した数値が図表-5の事例のように無意味な数値にならないよう,土日やチラシの立ち上がりの曜日などは別に集計する必要がある。
平均週販数量を算出して用いるのは,発注が週1から2回の場合である。この場合には曜日による変動を見る必要がないが,月の上旬/中旬/下旬,あるいは第1週,第2週,…という変化を見ておく必要がある。また,祭日が入る場合,地域の行事が入る場合など通常とは異なる場合には,その分を考慮して取り扱う必要がある。

(2) 安全在庫数量と最大在庫数量の算出
隔日発注(例えば月水金),隔日納品(例えば火木土)の場合で考えると,リードタイムは1日,週3回発注のため1回の発注は2日分の売上をカバーする。
金曜発注は,土日月(+火;納品時間が開店前なら不要,夕方の場合は火曜分まで)分の発注が必要になる。
図表-5に示した商品Aは,土日やチラシの初日でもバラツキが少なく,平均値15に対して13から19の間でしか変化していない。このようにバラツキが少ない場合,販売数量の平均値をそのまま用いても問題はなく,安全在庫数量と最大在庫数量はもっとも単純な形で算出することができる。
販売数量が安定している事を前提とすると,2日に1回の発注,リードタイムが1日であるから,通常であれば平均日販数量の1日分15を安全在庫数量,最大在庫数量は3日分(安全在庫数量1日分+1回の発注2日分),45と設定することができる。
ただし,土曜納品時点では,前述のように土日月(+火;納品時間が開店前なら不要,夕方の場合は火曜分まで)までの分が加わり,瞬間的に80から90まで増加する。
難しいのは,商品Cや商品Dである。平日は全く売れていないが,チラシの初日や土日に集中して販売数量が増えており,平均日販数量15は全く意味を持たない。
厳密には,月火水金と木土日を分けて考え,別々に安全在庫数量と最大在庫数量を設定することが必要であるが,作業の手間を考えれば大きい方の値を基準にする方が実際的である。商品Cでは,安全在庫数量を木土の販売数量の25,最大在庫数量は多少多めに感じるかもしれないが,土日の最大販売数量(25+50)+月火の販売数量(土日は発注がなく,月曜発注,火曜納品)10+安全在庫数量25の110という値になる。
ただし,週の内,土曜納品時点の値であり,土日月火の販売数量25+50+5+5=85を引くと火曜納品時点では25と(安全在庫数量)という数値になる。

(3) 発注数量の算出
発注数量は,最大在庫数量-発注時点在庫数量+リードタイム期間中販売予測数量で求めることができる。
図表-5の商品Aの場合であれば,45-15(ここでは安全在庫数量と設定した数値)+15=30(ほぼ2日分の販売数量)が発注数量となる。販売数量が安定しているため,安全在庫数量をベースとして売れた数量だけ発注するという形になる。
商品Cでは,110-25(ここでは安全在庫数量と設定した数値)+5(平日の販売数量)
=90(月曜発注,火曜納品)となるが,実際には週の前半は木曜の売上に備えて30ぐらい在庫を持てば十分である。在庫を積み込むのは水曜発注,木曜納品からであり,金曜発注,土曜納品と合わせて土日分の在庫を積み増していけばよい。

2. 発注と在庫管理の実際 年末年始の状況とモレなく販売するためのポイント
年末年始に向け,発注・在庫管理のポイントを整理していくと次のようになる。
(1)売れ方による商品のタイプと特徴
商品の売れ方を見ていくと,いろいろなタイプがある。
季節的に売れる商品,地域行事や生活歳時によって売れる商品,気候に敏感に反応する商品,年間を通して安定して売れる商品,平日に売れる商品,土日祭日によく売れる商品,チラシに掲載するとよく売れる商品,エンドや平台で大量陳列するとよく売れる商品,客数に比例して売上が増減する商品,….などである。
また,フェイスが固定されず,売場づくりや売り方を工夫することで売上を伸ばせる『売り込み型の商品』,定番的に扱い,売場づくりや売り方を変えられない『待ち型の商品』というような分け方もできる。(図表-6 売れ方による商品のパターン ) *PDF表示

通常,年末年始になると重点商品の設定を行い,特定の商品について集中的に販売する。ギフト関連商品,大掃除関連商品,クリスマス関連商品,正月関連商品などである。難しいのは,特定の商品を大量に山積みすることはできても,それ以外の商品については逆に対応がおろそかになる点である。
年末年始に設定する重点商品は,季節や生活歳時によって売れる商品ばかりであり,『売り込み型の商品』が中心である。以前と比べれば集中して売れることが少なくなってはいるが,売場づくりの中では,いまだに圧倒的なウエイトを占めている。
モレやすいのは,客数に比例して売上が増減する商品の内,フェイス管理されている定番商品=待ち型の商品である。住居関連商品では日用品・家庭用品,食品では,生鮮食品,日配商品,菓子,調味料などにそのような商品がある。
フェイス管理されている定番商品=待ち型の商品は,客数が増えることで確実に売上が増すが,フェイスを拡大し,在庫数量を増やすことは難しい。通常時と同じ最大在庫数量であるケースがほとんどである。
年末年始という時期にどうしても避けたいのは,『売り込み型の商品』と『待ち型の商品』の特徴をよく理解せずに『売り込み型の商品』であるにもかかわらず,『待ち型の商品』のような対応をしてしまうことである。ただ商品を売場に積み上げてPOPを付けるだけで,お客に対して何も働きかけをしないのでは,大きな販売チャンスを逃してしまう。
『売り込み型の商品』は,商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方などを工夫することで売上数量は変化し,状況次第では前年実績など全く参考にならないほど大きな変化を示すこともある。自分たちの工夫次第で如何様にも攻めることができる商品である。一方,『待ち型の商品』は,欠品を予防し,売上のモレを防ぐ守り型の対応になる。
それぞれの特徴をよく知り,的確な対応を採ることが重要である。
(2)OTBによる販売計画の立案と商品在庫の積み込み
①『売り込み型の商品』
生鮮食品,惣菜,日配商品,グロサリー,日用品・家庭用品,家電消耗品など大量陳列をし,集中販売をする商品は,商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方などによって売上が大きく変わる『売り込み型の商品』である。
これらの商品は,発注も在庫管理も総てが販売計画次第で変わってしまう。
OTBで説明した売上計画とその計画を実現するためにどのような商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方,人員体制を採るかという具体化案である。
例え,昨年の実績が100しかない商品があったとしても,それは昨年の商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方,人員体制などの結果であり,今年500という目標を設定し,そのための商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方,人員体制が設定できれば実現する可能性がゼロというわけではない。
過去の経験からいっても,商品に対する対応を変えることで前年実績の数倍の売上を実現しているケースは珍しくはない。問題があるとすれば,選定する商品の適否(適しているのはマーケットサイズが大きい商品で,それまで自店では本格的に取り組んだことがないような商品,難しいのはマーケットサイズが小さい商品・買う人が限定されている商品)と商品構成,価格設定,販促,売場づくり,売り方,人員体制,売上の内容に応じた売場づくりや売り方,在庫内容の修正など技術的・管理的な問題,そしてどこまで本気になって取り組めるかという意欲の問題である。
もちろん,前年実績を大きく上回る目標を設定するのであれば,予め悲観値(売れなかった場合)・普通値(計画通り)・楽観値(売れすぎた場合)という3点見積もりをしておくことは必要である。目標を達成するための具体策を厳密に検討することはもちろんであるが,売れなかった場合の在庫の処理方法,売れ過ぎた場合の商品手配方法についても綿密にシミュレーションをし,あらかじめ対応策の検討と関連部署・取引先などの了解を取りつけておくことは欠かせない。
年が開ければ,持ち越した在庫は大きな負担となる。しかし,リスクを恐れて何もしなければ前年実績などクリアーできるはずはない。以前,『去年と同じことをしていれば前年比90%』と言われていた時期があるが,現状は,その時よりも確実に悪化している。
したがって,在庫設定や発注をするにも,まずは『売上計画ありき』であり,『売り込み型の商品』について言えば,総ては『売上計画』とそれを実現するための具体化案次第と言うことができる。
②『待ち型の商品』
待ち型の商品については,客数の増加に伴う販売数量の変化をOTBによってシミュレーションすることで,通常に比べてどのくらい多くの在庫を持つ必要があるかを知ることができる。
難しいのは,補充発注に慣れているために,売場のフェイスが満杯である商品を,さらに追加して発注するということが感覚的になじめないことである。誰でも計算してみればすぐに分かることであるが,売場で商品だけを見て発注することに慣れてしまっているとなかなか難しい。
以前と比べれば物流もだいぶ改善されているが,それでも年末年始を考えると,商品によっては通常の2倍から3倍,中には5倍もの発注をしなければならないケースが出てくる。
以前,あるホームセンターで年末年始の発注とそれに伴う作業量の増加をOTBによってシミュレーションしたことがある。それまでの売上推移で12月も売上が推移すると設定して計算すると,12月の最終発注には,通常発注の5から6倍の発注が必要になるという計算結果が出た。発注,荷受,検品,倉庫への格納,品だしなど,どれを採ってもそのような対応は物理的にも不可能という結論になり,11月中旬から定番商品を中心に在庫の積み増しを行っていった。
その時にも問題になったのが,フェイスが満杯である商品の追加発注である。心理的な問題だけではなく,物理的にも置く場所がないという問題が出てくる。
現状で,最も簡単と考えられる対応策は,販売数量が極端に少ない商品,他の商品で代替が利く商品,もともと類似商品が多く定番として不要な商品などを定番からカットし,その分を重点商品のフェイス拡大に当てることである。フェイスを拡大することで最大在庫量を増やすことができ,発注や補充の手間も少なくなるので忙しい年末年始には適した方法である。しかも,よく売れる商品ばかりであるから多少残ったとしても在庫に関するリスクは少なく,年が明けても十分対応が利く。
ここで問題があるとすれば,カット商品の処理,および手間と時間をかけてまでフェイス変更をするというように踏み切れるかどうかという点である。
いずれにせよ,小売業は人と同じことをしていたのでは,それ以上の結果を出すことは難しい。ある有名企業の取締役が,『うちも水鳥と一緒で見えないところでは一生懸命に足で水かいているのですよ』としみじみ語っていたことを思い出す。
何事も楽をしてよい結果を得ることは難しい。このような時期であるからこそ,本来やるべきことでできていないことがあれば真剣に取り組むべきであろう。